【エビデンス・ファイル⑦】叱責・ほめ方・父親の科学

EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』エビデンス増補版より、毎日すこしずつお届けします(19/26)。増補版では、中室牧子『「学力」の経済学』をはじめとする教育経済学の研究を各章に織り込みました。この連載では、増補版で新しく書き下ろした「根拠」の部分をお届けします。

① 自尊心は、育てる「原因」ではなく育った「結果」だった

誰が:バージニア連邦大学 フォーサイス教授ら/フロリダ州立大学 バウマイスター教授ら

フォーサイス教授らは、最初の試験で成績が悪かった学生をくじ引きで2群に分け、片方にだけ「あなたはやればできる」という自尊心を高めるメッセージを毎週送りました。結果、そのメッセージを受け取った学生のほうが期末試験の成績が統計的に有意に低く、しかももともと学力の低い学生ほど負の効果が大きかったのです(詳しくは最終章でお話しします)。

バウマイスター教授らも、過去の膨大な研究を総括した上で「自尊心が高いと学力が高い」という定説を覆しました。両者は相関しているだけで、因果は逆。「学力が高いという原因が、自尊心が高いという結果を生んでいる」のです。実際、別の高校生の大規模追跡調査でも、高校1年で成績がよかった生徒は高校3年で自尊心が高かった一方、高校1年で自尊心が高かった生徒が高校3年で成績がよかったという関係は見られませんでした。

② では、どうほめるのか——「頭がいいね」と「よく頑張ったね」

誰が:コロンビア大学 ミューラー教授ら

対象:ある公立小学校の生徒(原論文では小学5年生)

設計:くじ引きで2群に分け、IQテスト(1回目)の結果がよかったとき、

・一方には「あなたは頭がいいのね」(もともとの能力をほめる)

・もう一方には「あなたはよく頑張ったわね」(努力をほめる)

と伝えた。その後、かなり難しめのIQテスト(2回目)、そして1回目と同程度のIQテスト(3回目)を受けさせ、推移を追った。

結果

・能力をほめられた子 → 成績が下がった。

・努力をほめられた子 → 成績が伸びた。

さらに衝撃的なのが、取り組み方の違いです。能力をほめられた子は、2回目の難しいテストで「この試験のゴールは学ぶことではなく、よい成績を得ることだ」と考えるようになり、点が取れなかったときに成績についてウソをつく割合が高くなりました。そして、よい点なら「自分は才能があるから」、悪い点なら「自分は才能がないから」と考えていました。

一方、努力をほめられた子は、2回目・3回目でも粘り強く挑戦を続け、悪い点を取っても「努力が足りなかった」と考えていました。

論文のタイトルが、すべてを言い表しています。

“Praise for intelligence can undermine children’s motivation”(能力をほめることは、子どものやる気を蝕む)

③ 「しなやかな心」は伸ばせる

誰が:スタンフォード大学 ドゥエック教授

わかったこと:「自分の能力は生まれつきではなく、努力によって後から伸ばせる」と信じている子は、やり抜く力が強い。そして、親や教師から定期的にそのメッセージを伝えられた子どもたちは、実際にこの考え方を身につけ、やり抜く力が強くなり、成績も改善した。

④ 男の子には父親が効く

第4章の【エビデンス・ファイル④】でご紹介したとおり、子どもと同性の親のかかわりのほうが効果が高く、とくに男の子にとって父親の役割は重要です。にもかかわらず、日本の父親のかかわりは母親の半分以下でした。

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ほめ方の結論——3つの実験を統合すると

言い方判定理由
「あなたは頭がいいね」×難問から逃げ、ウソをつくようになる(ミューラー)
「やればできるよ」(成績が悪いとき)×反省の機会を奪い、根拠のない自信を持たせる(フォーサイス)
「今日は1時間も勉強できたね」「今月は遅刻ゼロだね」◎具体的に達成した行動を認める
「能力は努力で後から伸ばせるんだよ」◎しなやかな心を育てる(ドゥエック)

ほめてはいけない、のではありません。ほめる対象を、「その子の能力」から「その子がやったこと」に移す。それだけです。

EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。

この記事を書いた人

HIRO 川上ヒロ先生