EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』エビデンス増補版より、毎日すこしずつお届けします(18/26)。増補版では、中室牧子『「学力」の経済学』をはじめとする教育経済学の研究を各章に織り込みました。この連載では、増補版で新しく書き下ろした「根拠」の部分をお届けします。
A. テストは健康診断。悪い数値が出たところこそ、治療が必要です。
テストは学習の健康診断です。「点数が良かった、悪かった」と一喜一憂するのは、「身長が伸びた、体重が増えた」と言っているのと同じです。重要なのは、どこが悪かったのか(病巣はどこか)を見つけることです。
点数だけで叱ると、子どもは親を信頼しなくなる
分析に入る前に、一つだけ親御さんに釘を刺しておかなければならないことがあります。それは、返ってきた点数だけを見て、頭ごなしに叱ってはいけないということです。
よくあるケースです。「前回より20点も下がってるじゃない! サボってたの!?」と親が激怒する。しかし実は、今回のテストは非常に難しく、学年の平均点自体が30点も下がっていた。つまり、偏差値や順位で見れば、むしろ前回より上がっていることが多々あります。
この状況で叱られた子どもはどう思うでしょうか。「頑張って順位を上げたのに怒られた。お母さんは何もわかってない」。こうなると、子どもは親の言葉を信頼しなくなり、心を閉ざしてしまいます。
プロの相場観を頼る
テストの結果が出たら、まずは感情を抑えてください。そして、もし通っている塾に信頼できる先生がいるなら、そのプロの目を頼ってください。「今回のテストは難しかったのか?」「この点数は、この子にしては頑張ったほうなのか?」。塾の先生は、平均点の推移や問題の難易度を詳しく分析しています。「点数は下がりましたが、難問揃いの中でよく粘りましたよ」という先生からの客観的な評価があれば、親も無駄に叱らずに済みますし、子どもも救われます。直接先生から子どもに話をしてもらうのも有効です。
ここで、教育経済学の考え方が役に立ちます。
第1章の【エビデンス・ファイル①】でご紹介した付加価値という指標を覚えているでしょうか。教員の質を「担当した子の成績が1年でどれだけ上がったか」という変化の幅で測る、という考え方です。
これは、子ども本人を評価するときにも、そのまま使えます。
他の子と比べて何点か、ではない。前回のその子と比べて、どれだけ動いたか。
学力テストの順位というものが、いかに当てにならないかを示すデータもあります。文部科学省の「全国学力・学習状況調査」の都道府県別順位は毎年大きく報道されますが、教育経済学の立場から見ると、これは学校教育の成果をほとんど測れていません。なぜなら、子どもの学力の大部分は家庭の資源(親の所得や学歴)と遺伝で説明されてしまうからです。新潟大学の北條准教授らの分析では、学力の50%は家庭や本人の要因で決まり、学校の資源はほとんど統計的に有意な影響を与えていませんでした。
つまり、学力テストの県別順位は、実質的に「家庭の資源の県別順位」を表しているにすぎない可能性があるのです。
これを家庭に持ち込むと、こうなります。
「◯◯ちゃんは90点だったのに」という比較には、意味がありません。その子の家庭の資源も遺伝も、あなたの子とは違うからです。比べるべき相手は、前回のわが子だけです。
30点だったわが子が35点になったなら、それは平均点90点のクラスで85点を取り続けている子より、はるかに価値のある5点です。
3つのミスの分類
さて、冷静に状況を把握した上で、返却された答案用紙を広げましょう。 間違えた問題を以下の3つに分類させてください。
知識不足(A): 知らなかった、忘れていた問題。
対策:単語帳や教科書に戻って覚え直す。
理解不足(B): 解説を読んでも意味がわからない、応用問題。
対策:先生に質問に行くか、類題を解き直す。
技術不足(C): ケアレスミス、時間配分ミス。
対策:先ほどの「ミス分析」を行う。
宝の山は、実は「ケアレスミス(C)」と「知識不足(A)」にあります。これらは、すぐに対策すれば次回のテストで確実に点数になります。「今回のテストで、一番悔しかった問題はどれ?」 とお子様に聞いてみてください。その一問を解き直して正解できれば、今回のテストを受けた意味があります。
EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。
