【エビデンス・ファイル②】ご褒美と目標の科学

EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』エビデンス増補版より、毎日すこしずつお届けします(11/26)。増補版では、中室牧子『「学力」の経済学』をはじめとする教育経済学の研究を各章に織り込みました。この連載では、増補版で新しく書き下ろした「根拠」の部分をお届けします。

① フライヤー教授のご褒美実験(米国5都市・3万6千人・9.4億円)

設計

作戦場所(学年)ご褒美の内容実際に得た金額(平均)
インプットにご褒美ダラス(小2)本を1冊読んで内容のテストに正答できたら200円1,381円
インプットにご褒美ワシントンDC(小6〜中2)態度・出席・行動の基準を満たせば2週間で10,000円53,285円
インプットにご褒美ヒューストン(小5)算数の練習問題を解くごとに親子両方に200円子22,872円/親25,427円
アウトプットにご褒美ニューヨーク(小4・中1)前回より点数が上がればテストごとに2,500円〜5,000円小4 13,943円/中1 23,200円
アウトプットにご褒美シカゴ(中3)通知表がA=5,000円、B=3,500円、C=2,000円42,293円

※1ドル100円で換算

結果:学力が上がったのはインプットにご褒美のグループ。とくに読書へのご褒美の効果が顕著。アウトプットにご褒美のグループはまったく改善しなかった。

② ご褒美は「勉強の楽しさ」を奪うのか → 奪わなかった

親御さんがいちばん心配されるのが、「ご褒美で釣ると、勉強そのものを楽しむ気持ちがなくなるのでは」という点でしょう。この心配には根拠があります。過去の研究では、献血をする人にお金を払うようにしたら献血者が減った、高校生の募金活動で「集めた額に応じて謝金」を導入したら募金額が減ったという結果が報告されています。お金という外からの動機が、内側から湧く動機を締め出してしまったのです。

しかし、フライヤー教授が実験後に心理学の手法で計測した結果、ご褒美をもらった子ども(処置群)ともらわなかった子ども(対照群)で、「一生懸命勉強するのが楽しい」という内発的な気持ちに統計的に有意な差はありませんでした。

ご褒美は、勉強の楽しさを奪わない。安心してください。

③ 小学生には現金よりトロフィー

誰が:シカゴ大学 レヴィット教授ら(『ヤバい経済学』の著者)

わかったこと:ご褒美としてお金の代わりに、約400円の安物のトロフィーを使ったところ、小学生に対しては、400円の現金より同額のトロフィーのほうが効果が大きかった。一方、中学生・高校生以上には、トロフィーより現金が効果的だった。

年齢によって、効くご褒美が違うのです。

④ 現金を渡しても、子どもは浪費しなかった

「お金を与えるのは教育上どうか」という不安についても、答えが出ています。フライヤー教授の事後アンケートによれば、ご褒美として現金を得た子どもたちは、浪費するどころか、きちんと貯蓄をし、娯楽・衣服・食べ物への支出を減らすという、より堅実なお金の使い方をしていました。

ただし、これには条件があります。この実験では、ご褒美と同時に貯蓄用の口座を作る、家計簿をつけるといった金融教育が行われていたのです。お金を渡すなら、お金の使い方もセットで教える。それが条件です。

⑤ 世界一費用対効果が高いのは「情報」だった

誰が:MIT貧困アクションラボ/マダガスカルでの実験(640の小学校)

わかったこと:「教育を受けると生涯収入がどれだけ変わるか」という情報を伝えるだけで、5か月後に学力が有意に上昇。しかもその効果は、2年間実施された少人数学級を上回った。

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教育経済学的に正しい「ご褒美」の設計

次の2つは、似ているようでまったく違います。

対象タイミング判定
「1時間勉強したら、終わったあとにお小遣いをあげる」インプットすぐ◎ 効く
「テストでいい点を取ったら、誕生日にお小遣いをあげる」アウトプット遠い先× 効かない

人間には、遠い将来のことは冷静に判断できるのに、近い将来のことになると目先の満足を優先してしまうという性質があります(経済学ではこれを「双曲割引」と呼びます)。ご褒美をすぐ渡すというのは、この性質を逆手に取って、「今勉強すること」の価値を意図的に引き上げる技術なのです。

EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。

この記事を書いた人

HIRO 川上ヒロ先生