夫がいつも余計なことを言って子どものやる気をなくします。どうすればいいでしょうか?

EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』より、毎日すこしずつお届けします(42/58)。

A.お父さんに3つの役割をお願いしてみましょう。

帰宅直後の一言が……

ここで、ある家庭で毎晩のように繰り返されている悲劇をご紹介しましょう。お母さんは、本書の教えを守り、今日一日、ぐっと我慢していました。

子どもがダラダラしていても、「勉強しなさい」と言いたい気持ちを飲み込み、「何時から始める予定?」と優しく問いかけ、子どものやる気が少しずつ積み上がるのを待っていました。

まるで、慎重に、慎重に、ジェンガを積み上げるように。

そこへ、夜20時。仕事からお父さんが帰ってきます。リビングで少し休憩している子どもを見て、開口一番、こう言い放つのです。

「なんだ、遊んでるのか。宿題は終わったのか? 受験生なんだから、もっと自覚を持てよ」

ガシャーン。

お母さんが数週間かけて積み上げてきた信頼とやる気のジェンガは、このたった一言で崩壊します。

子どもは「今やろうと思ってたのに! もうパパなんか嫌いだ!」と部屋に閉じこもり、お母さんは「余計なことを言わないでよ!」と激怒し、お父さんは「俺は正しいことを言っただけだろ!」と逆ギレする。断言します。家庭の教育方針が不一致であることは、子どもに混乱と逃げ道をもたらすだけで、百害あって一利ありません。

なぜ、パパの正論は猛毒なのか?

お父さんに悪気はないのです。むしろ、子どものことを愛していますし、心配しています。

問題なのは、お父さんの多くが、普段仕事で使っている男性的なビジネス脳(解決思考)を、そのまま家庭に持ち込んでしまうことです。

ビジネスの世界では、効率と結果が全てです。

売上が下がったら、原因を分析し、最短で解決策を実行し、V字回復させなければなりません。

だから、成績が下がっている我が子を見ると、優秀なビジネスマンであるお父さんほど、こう思考します。

成績が悪い(問題発生)

→勉強時間が足りないからだ(原因分析)

→今すぐ勉強させるべきだ(解決策の実行)

→おい、勉強しろ(指示出し)

論理的には100%正解です。しかし、教育において、この正論は猛毒です。

なぜなら、子どもは部下ではなく感情を持った未熟な人間だからです。

さらに言えば、本書で述べてきた自学自伸とは、あえて遠回りをさせ、失敗させ、自分で気づかせるという、ビジネスとは真逆の非効率なプロセスを必要とするからです。

Googleが証明した怒鳴る上司の生産性の低さ

ここで、ビジネスマンであるお父様方に馴染みのある、数字とエビデンスの話をしましょう。

「厳しく管理したほうが成果が出る」と思っているなら、それは最新の経営学では否定されています。

世界最強の企業Googleが、最も生産性の高いチームの条件を膨大なデータを元に分析したプロジェクト(プロジェクト・アリストテレス)をご存知でしょうか?

彼らが導き出した結論は、優秀なメンバーを集めることでも、高い給料を払うことでもありませんでした。

最も重要な要素は心理的安全性(Psychological Safety)でした。

「このチームなら、失敗しても怒られたり馬鹿にされたりしない」という安心感があるチームこそが、最強の成果を出していたのです。これを家庭に置き換えてみてください。

テストの点数が悪かった時、お父さんに怒鳴られる家庭。「お父さんに怒られるから隠そう」「言い訳しよう」とビクビクしている家庭。そこには心理的安全性は1ミリもありません。

Googleの結論に従うなら、失敗(悪い点数)を叱責する上司(父親)がいるチーム(家庭)は、生産性(学力)が下がるのです。

お子様のパフォーマンスを最大化したければ、Googleのマネージャーのように、まずは何を言っても大丈夫な安心感を提供してください。

パパ改造計画:お父さんにお願いしたい3つの役割

では、お父さんは子育てに関わってはいけないのか? 違います。お母さんや塾の先生にはできない、生物学的・脳科学的にパパにしかできない最強の役割があります。今日から、お父さんの業務内容は管理から以下の3点に変更です。

役割①:勉強ではなく社会を教える

「この数学の問題はな……」と教えようとしないでください。多くの場合、教え方が今の学校と違っていて子どもが混乱するか、「なんでこんなのもわからないんだ」と喧嘩になるのがオチです。

その代わり、社会のリアルを語ってください。

「今日、会社でこんな大失敗をして怒られたんだ。でも、謝って挽回したら、逆に信頼されたんだよ」

「世の中には、こういう仕事で誰かを喜ばせている人がいるんだぞ」

この広い視点を与えられるのは、外で戦っているお父さんだからこそです。子どもが「早く大人になりたい」「社会って面白そう」と思えたら、それが最高の学習意欲になります。

役割②:ママがセーフティネットなら、パパはチャレンジャー

OECD(経済協力開発機構)の研究によると、母親は安心感を与える傾向が強く、父親はリスクを取って挑戦させる傾向が強いとされています。

お母さんが日々の勉強管理(「宿題やったの?」「お風呂入りなさい!」)でガミガミ言わざるを得ないなら、お父さんは一緒になってガミガミ言ってはいけません。お父さんの役割は、リスクテイクの推奨です。

「お、今回のテストは難しい問題に挑戦した形跡があるな。点数は悪いけど、その心意気はいいぞ!」

「少しくらい失敗しても死なないから、思い切ってやってこい!」

お母さんが守り、お父さんが背中を押す。この役割分担(バランス)こそが、子どもを強くします。

役割③:結果ではなく背中で語る

「勉強しろ」と口で言う代わりに、お父さん自身が家で勉強している背中を見せてください。

新聞を読む、読書をする、資格の勉強をする。スマホで動画を見ながら「勉強しろ」と言う上司と、自分も必死に働いている上司。どっちの言うことを聞きたいか、ビジネスマンの皆様ならわかりますよね?

「パパも頑張ってるから、俺もやるか」

これ以上の教育はありません。

お母様へ:パパを巻き込むためのキラーフレーズ

最後に、悩めるお母様へ。

夫を変えるのは、子どもを変えるより難しいかもしれません。しかし、真っ向から「余計なこと言わないで!」と否定すると、夫は拗ねてしまいます。

こう伝えて、手のひらで転がしてください。

「ねえ、勉強の細かい管理は私が(塾が)見るから、あなたは『社会の厳しさと面白さ』を語る担当になってくれない? それは私にはできない、あなたにしかできない役割なのよ」

男は「あなたにしかできない」という言葉に弱いです(笑)。

管理職を解任し、特別顧問に任命するのです。

夫婦がワンチームになったとき、お子様の自学自伸は加速します。

EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。

この記事を書いた人

HIRO 川上ヒロ先生