EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』より、毎日すこしずつお届けします(7/58)。
教えない≠悪
「親が教えないで、どうやって勉強できるようになるの?」 そう思われるかもしれません。特に、ご自身が高学歴であったり、教育熱心な親御さんほど、「私が教えてあげなきゃ」「私がついていれば大丈夫」と使命感に燃えがちです。
しかし、残念な事実をお伝えしなければなりません。親御さんが名コーチ(教え上手)であればあるほど、子どもは指示待ち人間になりがちです。困ったら横を見ればお母さんが教えてくれる。間違っていたらお父さんが正してくれる。黙っていてもお母さんが代わりに発言してくれる。そんな環境では、子どもは自分で学ぶ(正解か不正解かを確認する)というセンサーを切ってしまいます。
まずは、「教えないこと=悪」「教えないこと=冷たい」という認識を捨ててください。 「教えないこと=子どもの脳を動かすチャンスを与えている」「親として最高のプレゼントを贈っている」と捉え直しましょう。親の役割はティーチャー(教える人)ではなくサポーター(環境を整え、応援する人)であるべきです。
子どもにボールを投げ返そう
では、具体的にどうすればいいのか。家庭でのシーンで考えてみましょう。
リビングで宿題をしている子どもが、「ねえ、この漢字なんて読むの?」と聞いてきました。親御さんは料理をしている最中です。ここで、「ああ、それは『センタク』だよ」と即答してはいけません。これでは余白ゼロです。子供は1秒も脳を使っていません。ただの音声入力装置として親を使っただけです。
家庭で作る余白とは、例えばこう返すことです。「あれ、先週似たような字をドリルでやってなかった?」「辞書の引き方、学校で習ったよね? 辞書とお母さん、どっちが正確かな?」「お母さんもちょっと自信ないな〜。調べて教えてくれる?」
冷たく突き放すのではありません。「自分で調べることができるはずだ」という信頼をベースに、ボールを子どもに投げ返すのです。これを始めると、最初は子どもも戸惑います。「お母さん、なんで急に教えてくれなくなったの? 意地悪!」と言われるかもしれません。そのときには堂々と、目を見て理由を説明しましょう。「意地悪じゃないのよ。〇〇ちゃんには、自分で調べる力がついてきていると思うから、練習してほしいの。それが、〇〇ちゃんが賢くなる一番の方法だからだよ」と。これが、正しい学び方への招待状です。
親からの質問返しの技術
子どもが「わからない」と言ってきたときこそ、親の腕の見せ所です。 答えを教えるのではなく、魔法のテクニック「質問返し」を使ってください。
子:「ねえ、この算数の問題、わからない。教えて」
× 親:「これはね、道のり÷速さだから……」 ←思考停止
○ 親:「どこまでわかって、どこからわからないの?」
○ 親:「問題文の、何が聞かれていると思う?」
○ 親:「解説の1行目はどういう意味だと思う?」
○ 親:「図は書いてみた?」
このように質問を返すことで、子どもは答えを聞く受け身の姿勢から、答えを探す能動的な姿勢に切り替わらざるを得なくなります。 脳のスイッチを強制的にONにするのです。
最初は「えー、いいから教えてよー」と文句を言うでしょう。泣くかもしれません。 それでも心を鬼にして(表面は笑顔で)、粘り強く質問返しを続けてください。 すると、子どもは学習します。「あ、お母さんに聞いてもどうせ『どこがわからないの?』って聞かれるな……。面倒くさいから、聞く前に自分で整理してみよう」
こうなれば親の勝ちです! これこそが自立への第一歩です。「親に聞くより自分で考えたほうが早い」と気づかせることが、最大の家庭教育です。
子どもの成長を長期的に見守ろう
この「待つ・導く」アプローチには、即効性はありません。最初は時間がかかり、宿題が終わらない夜もあるでしょう。イライラして親子喧嘩になることもあるかもしれません。「教えてあげれば5分で終わるのに!」と叫びたくなる夜もあるでしょう。
しかし、ここで親が忍耐力を持って接し続けられるかどうかが、一年後、いや将来の子どもの姿を決定づけます。目先の宿題を早く終わらせることよりも、一問に対して自分で悩み抜く経験の方が、長い目で見れば100倍価値があります。
どうか、焦らないでください。植物の成長を目で見ることができないように、子どもの成長もすぐには見えません。毎日見ていると変わらないように見えます。しかし、土の下では確実に、太く強い根が伸びています。その根っこさえ育てば、あとは驚くほどのスピードで枝葉を伸ばす時期が必ず来ます。
チェックリスト
□ 子どもが勉強で悩んで沈黙しているとき、その沈黙を「脳が動いている貴重な時間だ」と捉え、不安にならずに我慢できていますか?
→NOだと、子どもは「黙っていれば誰かが助けてくれる」と学習し、考えることをすぐに諦める癖がついてしまいます。親の忍耐力が試されています。
□ 子どもが「教えて」と言ってきたとき、すぐに答えを与えるのではなく、「どこまでわかったの?」と質問で返せていますか?
→NOだと、子どもは親を便利な辞書代わりに使い続け、自分で情報を検索・獲得する力が育ちません。社会に出てから困るのは子ども自身です。
□ 目先のテストの点数や宿題の完了に一喜一憂せず、半年後、一年後という長期的な視点で子どもの自立を見守る覚悟を持っていますか?
→NOだと、子どもはプレッシャーで本来の力を発揮できなくなります。「今は根っこを育てている時期だ」と、親自身がドンと構えることが、子どもの安心感に繋がります。
EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。
