本当に良い先生はどんな先生?

EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』より、毎日すこしずつお届けします(4/58)。

すぐにわかるように教えてくれる先生?

生徒が「先生、ここがわかりません」と聞きに来る。先生は笑顔で迎える。「どれどれ?ああ、これはね、こうやって補助線を引くとここが合同になるだろ?だから答えはこうなるんだよ」 手際よく、非常にわかりやすく解説する。「あ、そういうことか!わかった!先生すごい!」と生徒は目を輝かせる。

一見、素晴らしい教育現場の光景です。ドラマに出てくるような理想の先生像かもしれません。しかし、私はあえてここに警鐘を鳴らしています。心を鬼にして言います。すぐにわかるように教えることは、時に生徒から考える機会を奪うことと同義だからです。

すぐに答えや解法を与えてくれる先生は、生徒にとって都合の良い先生ではありますが、本当に力をつけてくれる先生とは限りません。なぜなら、来週の定期テスト、来年の入試、そして社会に出たとき、横にそのわかりやすく教えてくれる先生はいないからです。

わかりやすい授業は、たとえるなら極上の料理をスプーンに乗せて、口まで運んでくれるようなものです。生徒は口を開けて待っているだけで、美味しい料理(知識)が胃袋に入ってきます。その瞬間は満腹になりますし、「勉強したなあ(食べたなあ)」という満足感も得られます。しかし、これではいつまで経っても自分で料理を作る力(問題を解く力)は、つかないのです。最高のサービスを受ければ受けるほど、生徒は自分一人では何もできない料理を食べるだけのお客さんになっていくだけです。

「俺の言った解き方でやれば点数はあがる」と言う先生?

塾予備校業界には、いわゆるカリスマと呼ばれる先生が存在します。 「俺の言う通りにやれ」「この裏ワザを使えば3秒で解ける」「これは学校の先生は教えてくれない。俺のやり方が最強だ」と豪語するタイプです。

確かに、彼らの言う通りにすれば、定期テストの点数は一時的に上がるでしょう。模試の偏差値も跳ねるかもしれません。 しかし、それは先生のコピーロボットとしての性能が上がったに過ぎません。

「なぜその解き方をするのか?」「なぜその公式が成り立つのか?」「この問題設定が少し変わったら、その裏ワザは使えるのか?」

根源的な理解をすっ飛ばして、パターン処理だけを叩き込む。これは、先生自身の「俺って教えるの上手いだろ?」「俺のおかげで受かっただろ?」という自己満足に他なりません。 生徒の点数が上がったのは、生徒の実力がついたからではなく、先生がリモコンで操作していたからです。生徒を自分の実績作りの道具にしてはいけないのです。本当に生徒を思うなら、リモコンを手放し、生徒自身に操縦桿を握らせなければなりません。

答えは「教えず、待てる先生」

では、本当に良い先生とは何か。 それは、生徒が自力で解けるようになるまで、じっと待てる先生です。

安易に答えを教えず、ヒントを小出しにし、生徒が悩み、鉛筆を回し、天井を見上げ、試行錯誤する時間を見守る。これは、教える側にとって非常に苦しい時間です。 答えを言ってしまえば数秒で終わることを、何十分、時には何日もかけさせるわけですから。 効率は悪いです。生徒からは「あの先生、教えてくれない」「わかりにくい」「嫌な先生」と文句を言われる恐れも大いにあります。親御さんから「もっと手厚く教えてください」とクレームが来るリスクさえあります。

しかし、その泥臭い時間の積み重ねこそが、本物の学力を作ります。 壁にぶつかり、悩み抜き、自力で乗り越えた経験だけが、脳に深く刻まれるのです。

「自学自伸」は、インスタントな結果を求めません。お湯を入れて3分でできるカップラーメンのような学力は、早くできるかわりに、栄養も少なく、すぐに伸びて食べられなくなってしまいます。我々が目指すのは、じっくりと出汁をとり、時間をかけて煮込んだ、一生モノの栄養となる学力です。

指導者や親には、目先の点数に一喜一憂せず、この長い道のりを生徒と共に歩む覚悟が必要なのです。 「すぐに結果が出なくても、この子が頭を使っているならそれでいい」。そう腹を括れるかどうかが、子供の将来を左右します。

EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。

この記事を書いた人

HIRO 川上ヒロ先生