子どもが伸びる余白を意識する

EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』より、毎日すこしずつお届けします(5/58)。

頭を使わなければ伸びない!

断言します。生徒が伸びるのは、例外なく本人が頭を使っているときです。

先生のありがたい話を聞いているときでも、綺麗な板書を一生懸命ノートに写しているときでもありません。「うーん、ここまではわかるんだけどな……」と唸りながら、自分の脳みそに負荷をかけている、まさにその瞬間だけが、成長の時です。

ジムの筋トレに例えてみましょう。生徒が「筋肉をつけたいです!」と言ってジムに来ました。トレーナー(先生)が「よし、見本を見せてやる」と言って、重たいバーベルを軽々と持ち上げて見せました。「どうだ、すごいフォームだろう?」 生徒はずっとそれを見ていました。さて、筋肉がついたのは誰でしょうか? 当然、トレーナーだけです。生徒は痩せ細る一方です。

勉強も全く同じです。 どんなに名講師の授業を受けても、生徒自身が重たいバーベル(難しい問題)を持ち上げようとプルプル震えていなければ、意味がないのです。 「頑張れ! 君なら持ち上げられる!」と補助に入ることはあっても、代わりに持ち上げてしまってはいけません。

教えすぎずに余白を残す

そこで重要になるのが、余白という概念です。指導における余白とは、あえて教えない部分、生徒が自分で埋めるべきスペースのことです。

ダメな指導は、この余白を先生が全て埋めてしまいます。 「問題文のここに注目して。これはこういう意味だから、あの公式を使うんだよ。計算式はこうなって、だから答えはこうなるんだよ。はい、書いて」と、隙間なく説明してしまう。これは塗り絵で言えば、大人が全部きれいに塗ってしまって、子供に「はい、完成したよ」と渡すようなものです。子供は何の楽しさも成長も感じません。

指導者が自分の役割を勘違いしているとこうなります。「わかりやすく教えることが良いことだ」という思い込みが、生徒の余白を奪うのです。

一方、生徒が伸びる指導は、意図的に余白を残します。「ここまでは説明した。じゃあ、この続きはどうなると思う?」「教科書のここを読んでごらん。その上で、今の問題のヒントを探してごらん」「図は先生が書いた。式は自分で立ててごらん」

この空白の時間、空白の思考スペースこそが、生徒が自学自伸するための舞台なのです。この余白でこそ、生徒は試行錯誤し、失敗し、そして成功をつかみ取ります。

「待つ」「適切に導く」「定着させる」「自立させる」のステップ

自学自伸を促すために、我々は以下の4つのステップを意識しています。これは手順を記した指導マニュアルというよりは、生徒と向き合う際、我々が崩してはならない基本姿勢のようなものです。

待つ: すぐに手を出さない。生徒が悩み、沈黙している時間を恐れない。沈黙は、思考している証拠です。 ただし、思考停止状態(ボーッとしている、諦めている)なら、すぐに次のステップへ移ります。思考している沈黙なのか、停止している沈黙なのかを見極めるのがプロの技です。

適切に導く: 行き詰まりすぎていると判断したら、答えではなく考え方のヒントや調べるべき教材を示します。「北に行け」と言うのではなく、コンパスの使い方を教えるイメージです。

定着させる: 「わかった!」と生徒が言っても、信用しません(笑)。わかった気になっているだけの状態を防ぐため、類題を解かせたり、「じゃあ今の解説を、先生に簡潔に説明してみて」と自分の言葉で説明させたりします。

自立させる: 最終的には、ヒントすら与えず、最初から最後まで一人で完結させます。「先生、できました」と持ってきたノートが完璧だった時、「頼もしくなったな。もう一人でも戦えるよ」と笑顔で送り出す。これがゴールです。 不安そうに質問に来ていた生徒が、自信に満ちた顔で机に戻っていく。その背中を見送る瞬間こそが、我々にとっての最大の喜びです。

子どもの成長を信じて待つ

この余白と4つのステップは、塾講師だけのものではありません。 学校の先生、そして何より、毎日お子さんと接する保護者の方々にこそ、意識していただきたいのです。

宿題をしている我が子を見て、「早くしなさい」「なんでこんな簡単なことがわからないの」と言って、つい手を出してしまいたくなる。答えを教えたくなる。その気持ち、痛いほどわかります。でも、そこをぐっとこらえてください。これは放置ではありません。子どもの成長を信じて待つという、最も愛情深く、かつエネルギーの要る教育的行為なのです。待つことは、教えることの何倍も疲れます。でも、その我慢が、子供の翼を育てます。

EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。

この記事を書いた人

HIRO 川上ヒロ先生