【エビデンス・ファイル③】「ちょうどいい負荷」の科学

EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』エビデンス増補版より、毎日すこしずつお届けします(13/26)。増補版では、中室牧子『「学力」の経済学』をはじめとする教育経済学の研究を各章に織り込みました。この連載では、増補版で新しく書き下ろした「根拠」の部分をお届けします。

① 同じレベルの仲間と学ぶと、下位層がいちばん伸びる

誰が:マサチューセッツ工科大学 デュフロ教授ら

対象:ケニアの121の公立小学校

設計:くじ引きで「習熟度別学級を導入する学校(処置群)」と「通常学級のままの学校(対照群)」に分けて比較

結果:教員が習熟度に合わせた指導をする限り、習熟度別学級はすべての学力層の学力を上げた。とくにもともと学力が低かった子の伸びが大きかった。導入をやめた後も1年以上効果が持続した。

② 周りの学力は、確実に自分に影響する

誰が:スタンフォード大学 ホックスビィ教授

対象:米国テキサス州の小学3〜6年生

工夫:学年の男女比は学校によって偶然ばらついており、平均的に女子の学力が高いため、「たまたま女子が多い学年」は平均学力が高くなる。この偶然を利用した(このように、人の手で実験を設計していないのに実験のような状況が自然に生じることを「自然実験」と呼びます)

結果:同級生の平均点が1点上がると、自分自身の点数は

・国語で 0.3〜0.5点

・数学で 1.7〜6.8点

上がっていた。米国だけでなく、欧州6か国・チリ・中国でも同様の結論が得られている。

③ ただし、上位層の恩恵を受けるのは上位層だけ

わかったこと:学力の高い優秀な友人から影響を受けるのは、そのクラスでもともと学力が高かった子どものみ。中間層・低学力層はほとんど影響を受けず、場合によってはマイナスの影響を受ける。スウェーデンの高校生データを用いた研究では、学力の高い同級生の存在が低学力層の自信と進学意欲を奪っていた。

「レベルの高い集団に無理やり入れる」ことは、逆効果になりうるのです。

④ 問題を抱えた子を放置すると、周りの学力が下がる

誰が:ノースウェスタン大学 フィグリオ教授

結果:問題を抱えた子の存在は、学級全体の学力に負の効果を与えていた。別の研究では、1人の問題児がいることで、他の児童が新たな問題行動を起こす確率が17%上昇すると推計されている。これは排除せよという話ではなく、問題を抱えた子には早く十分なケアを入れるべきだという話です。

—

この章の技術と、エビデンスの対応

本章の技術裏づけ
7割解けて3割間違える教材が最適著者の経験則。「負荷はレベルの少し上に置く」という点で習熟度別学級の知見(デュフロ)と方向が一致
解き直し(アウトプットイン)に4割検索練習の効果(第6章後のコラム参照)
解説は「紙の先生」「勉強のしかた」を示す存在があると成果が変わる(ロドリゲス/第2章本文)
ピンポイントで質問させる質問の精度=メタ認知ストラテジー。非認知能力の一種(エビデンス・ファイル⑧)

EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。

この記事を書いた人

HIRO 川上ヒロ先生