EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』エビデンス増補版より、毎日すこしずつお届けします(2/26)。増補版では、中室牧子『「学力」の経済学』をはじめとする教育経済学の研究を各章に織り込みました。この連載では、増補版で新しく書き下ろした「根拠」の部分をお届けします。
目に見えないものを、数字にする
教育経済学は、教育を経済学の理論や手法を使って分析する、応用経済学の一分野です。慶應義塾大学の中室牧子氏の著書『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、この分野の知見を一般向けにまとめた名著で、本書でご紹介するエビデンスの多くも、同書を入り口として私が学んだものです。
教育経済学者がやっていることは、大きく二つです。
一つ目は、目に見えないものを数字で示すこと。
「子どもたちの目が輝くようになりました」「教室に活気が出ました」。塾の広告でよく見る表現ですが、これは書き手によっていくらでも変わる主観です。教育経済学者は、こうした言い方で「効果があった」とは言いません。代わりに、学力テストのスコア、進学率、就職率、そして20年後の年収といった、誰が測っても同じになる客観的な数字で効果を示します。
「教育の効果は数字では測れない」という反論は必ず出ます。私も昔はそう思っていました。しかし、地球温暖化対策も高速道路の建設も、効果を数字で示さなければ国民の納得は得られません。教育だけが例外でいられる理由は、実はどこにもないのです。
二つ目は、原因と結果、すなわち因果関係を明らかにすること。これが、本書を読む上で決定的に重要になります。
「読書する子は成績がいい」の落とし穴
文部科学省が「全国学力・学習状況調査」を分析したところ、「親の年収や学歴が低くても学力が高い児童の特徴は、家庭で読書をしていること」という結果が出ました。これを受けて、多くのメディアが「子どもに読書をさせることが重要だ」と報じました。
この報道、実は二重に間違っています。
間違い①:因果関係と相関関係の混同
・因果関係とは「Aという原因によってBという結果が生じた」ということ。
・相関関係とは、単に「AとBが同時に起こっている」ということ。
相関関係は、どちらが原因でどちらが結果かを何も教えてくれません。
つまりこの調査結果は、「読書をしたから学力が高くなった」のではなく、「学力が高い子が、たまたま読書もしている」だけかもしれないのです。読書が原因なのか、結果なのか。鶏と卵です。
もし後者だとしたら、慌てて本を買い与え、読み聞かせの時間を増やしても、お金と時間の無駄遣いに終わります。
間違い②:「見せかけの相関」を検討していない
さらに、読書にも学力にも同時に影響する「第三の要因」があるかもしれません。
たとえば「子どもに対する親の関心の高さ」です。関心の高い親は、子どもに本を買い与えます。同時に、勉強するようにも促します。すると、本を読む子ほど成績がいい、という関係が生まれます。しかし本当の原因は読書ではなく、親の関心の高さです。読書と学力の間には、何の因果関係もないかもしれない。これを「見せかけの相関」と呼びます。
この視点を持つだけで、世の中の教育情報の見え方が変わります。
「東大生の◯%が、リビングで勉強していた」
「成績上位の子の◯%が、朝食を食べている」
「難関校に受かった子の家には、平均◯冊の本があった」
こうした情報を見たら、必ずこう自問してください。
「逆ではないか?」(成績がいいからリビングでも集中できるのでは?)
「第三の要因はないか?」(朝食を用意できる家庭には、他にどんな余裕があるのか?)
ちなみに、私が本書で繰り返し語る「教えすぎると成績が下がる」も、放っておけばこの罠にはまります。「教えすぎている家庭の子は成績が悪い」という関係が仮に観察されたとして、それは因果なのか。成績が悪いから親が教えすぎているだけ、という逆の因果もあり得るわけです。
では、どうすればいいのか。
EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。
