EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』より、毎日すこしずつお届けします(3/58)。
本章に入る前に、ある少年の話をさせてください。
Aくん、と呼んでおきましょう。彼が私の塾に入ってきたのは、小学6年の春。中学受験を控え、地元では「神童」と評判の少年でした。入塾テストの成績は群を抜き、礼儀正しく、目を見て話す。講師全員が「久しぶりに大物が来た」とざわついたのを、今でも覚えています。
ところが、入塾3ヶ月。Aくんの様子が変わりました。難しい問題に当たると、ペンが止まる。じっと問題を見つめたまま、動かない。
ある日、私が直接Aくんの隣に座って、こう聞きました。「Aくん、この問題、最初にどう考えた?」 Aくんは、しばらく沈黙した後、こう答えました。「……考えてないです。だって、考えても、わからないから」
Aくんは、賢くなかったのではありません。むしろ天才的な素養を持っていました。お母様は教育熱心で、幼い頃から毎日、わからない言葉があればすぐに辞書を引いて教え、算数の問題でつまずけば図を描き、Aくんが理解できるまで何通りもの説明を試みる、本当に素晴らしい方でした。
そんなAくんが、なぜ「考えても、わからない」と言うようになったのか。彼の頭の中には、お母様から手渡された膨大な「正解集」が詰まっていました。それを引き出すのは得意でした。しかし、正解集に載っていない問題が出た瞬間、彼の脳はフリーズしたのです。
「考える」という筋肉そのものが、これまで一度も鍛えられていなかったのです。お母様の愛情が、結果としてAくんから「考える機会」をすべて奪ってきたのです。
Aくんの話は、決して特殊な例ではありません。塾に来る相談の中で、最も多いのが「親が丁寧に教えているのに、成績が伸びない」という悩みです。それは、サービスが悪いからではなく、サービスが『良すぎる』からです。
なぜそんなことが起きるのか。本章で、そのメカニズムを解き明かしていきます。
EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。
