EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』エビデンス増補版より、毎日すこしずつお届けします(15/26)。増補版では、中室牧子『「学力」の経済学』をはじめとする教育経済学の研究を各章に織り込みました。この連載では、増補版で新しく書き下ろした「根拠」の部分をお届けします。
本章は、本書の中でもっともデータが揃っている領域です。日本の大規模データによる研究があるからです。
① 親の4つのかかわり方を点数化して比べた研究
誰が:中室牧子氏/早稲田大学 松岡助教/学習院大学 乾教授ら
データ:厚生労働省「21世紀出生児縦断調査」(2001年生まれの子ども約5万3千人を10年以上追跡)
方法:小学校低学年の子を持つ親の家庭学習へのかかわりを、次の4項目について各2点満点(合計8点満点)で点数化し、子どもの学習時間への影響を推計した。
1. 勉強をしたか確認している
2. 勉強を横について見ている
3. 勉強する時間を決めて守らせている
4. 勉強するように言っている
平均点:母親 5.89点/父親 2.69点
結果(ここが本章の核心です)
・「勉強するように言う」は、父母ともに効果がほとんどない。それどころか、母親が娘に対して「勉強するように言う」のは逆効果だった。
・一方、「勉強を横について見ている」「勉強する時間を決めて守らせている」という、親が自分の時間を犠牲にせざるを得ない手間のかかるかかわりは、効果が高かった。
・子どもと同性の親のかかわりの効果が高い。とくに男の子にとって父親が果たす役割は大きい。
・そして朗報。祖父母・兄姉・親戚などの同居者が横について見たり、時間を決めて守らせたりしても、親とほぼ変わらない効果が見込める。
「勉強しなさい」という一言は、親にとってもっとも楽で、もっとも効かない手段だった——これが、5万3千人のデータが出した答えです。
ノーベル経済学賞受賞者のヘックマン教授も、インタビューでこう述べています。
「親自身が働いていたりして思うように時間を割けなければ、できる限り時間を割きながらも、部分的に何らかの『助っ人』を頼んで、時間不足を補えばいいのです。かえって親の力量では与えられないような刺激を与えることにもなり、それは本人にも、社会にも良いことでしょう」
すべてを親が抱え込む必要はありません。
② テレビ・ゲームを1時間やめさせても、学習時間は2分しか増えない
結果:1時間の削減で、増える学習時間は男子最大1.86分、女子最大2.70分。ただし1日1時間までは無害、2時間超で悪影響が飛躍的に増大。
③ 自制心は「筋肉」である——鍛えられる
「背筋を伸ばせ」と言われ続けて忠実に実行した学生は、成績が向上したという研究があります。背筋を伸ばすこと自体が効いたのではありません。意識しないとできないことを継続的に行ったことで、自制心そのものが鍛えられたのです。心理学の多数の研究でも、「細かく計画を立て、記録し、達成度を自分で管理する」ことが自制心を鍛えるのに有効だと報告されています。
つまり本章でお伝えした「トリガーを決める」「スモールステップ」「記録する」は、単なる根性論ではなく、自制心という筋肉のトレーニングメニューなのです。
④ 先延ばし癖は、大人になっても続く
誰が:大阪大学 池田教授(行動経済学)
結果:子どものころに夏休みの宿題を休みの終わりのほうにやった人ほど、大人になってから喫煙・ギャンブル・飲酒の習慣があり、借金もあって、太っている確率が高かった。
ただし、この研究が示したのは「先延ばし癖は大人まで続く」という相関であって、「7月中に終わらせれば喫煙や借金を防げる」という因果ではありません。だからこそ、③の「自制心は鍛えられる」が希望になります。夏休みの宿題は、その子の先延ばし癖に気づき、計画と記録の訓練を始める絶好の機会なのです。
—
この章のまとめ(エビデンスの視点から)
| よくある行動 | データが示す効果 | 代わりにやること |
|---|---|---|
| 「勉強しなさい」と言う | ほぼゼロ。母→娘は逆効果 | 横について見る/時間を決めて守らせる |
| スマホ・ゲームを取り上げる | 1時間で学習は約2分増 | 総量2時間の上限を守らせる/勉強中だけ隔離する |
| 親がすべて抱え込む | ― | 祖父母・兄姉・塾でほぼ同等の効果 |
| 気合で習慣化させる | ― | トリガー固定・記録・スモールステップで自制心を鍛える |
EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。
