EIMEI教育グループ代表・川上大樹の著書『教えなければ子は育つ ― AIに負けない「考え抜く力」を授ける見守り術』エビデンス増補版より、毎日すこしずつお届けします(20/26)。増補版では、中室牧子『「学力」の経済学』をはじめとする教育経済学の研究を各章に織り込みました。この連載では、増補版で新しく書き下ろした「根拠」の部分をお届けします。
AIは効率化の道具ですが、人間の成長は常に非効率の中にあります。遠回りして、失敗して、何時間も悩んでやっと解けた後にこそ、忍耐力、創造性、そして自己肯定感が育ちます。これらは、AIが逆立ちしても人間に提供できないものです。
そして、ここが決定的に重要なのですが、AIに代替されない力の正体は、すでに研究によって名前がついています。
それが非認知能力です。
IQや学力テストで測れる力を「認知能力」と呼ぶのに対し、忍耐力、自制心、社会性、意欲、やり抜く力、回復力といった、人間の気質や性格的な特徴を非認知能力と呼びます。一般に「生きる力」と言われるようなものです。
第5章でご紹介したペリー幼稚園プログラムを思い出してください。あのプログラムがIQに与えた効果は、8歳前後で消滅していました。それなのに、40歳時点の所得や逮捕率には差がついていた。効いていたのは、認知能力ではなく非認知能力だったのです。
ノーベル経済学賞受賞者のヘックマン教授は、米国の一般教育修了検定(日本でいう高卒認定試験)を分析しました。高校に通わずに検定に合格した人と、高校を卒業した人。学力(認知能力)は同程度のはずです。ところが、前者のほうが年収も就職率も低かった。
学力が同じなのに、人生の結果が違う。その差分こそが、非認知能力です。
そしてヘックマン教授は、こうも述べています。誠実さ、忍耐強さ、社交性、好奇心の強さ——これらの非認知能力は、「人から学び、獲得するもの」である、と。
だとすれば、学校や塾という場所の意味も変わってきます。そこは知識を教わる場所であると同時に、先生や同級生から非認知能力を学ぶ場所なのです。AIが知識の伝達を肩代わりする時代に、人間が集まる場所に残る価値は、まさにここにあります。
AIに奪われるのは、認知能力の一部です。奪われないのは、非認知能力です。そして幸いなことに、非認知能力は、成人後まで鍛えられるものが少なくないことがわかっています。認知能力の改善には年齢的な限界があるのに対し、こちらは今からでも間に合うのです。
最後に、ご家庭で今日から実践していただきたい共存ルールを提案します。
AI禁止ではなく裏取りをさせる: AIが出した答えが合っているか、教科書や資料集で裏取り競争をさせてみてください。
プロセスを強烈に褒める: AIは結果しか出せません。だからこそ、「どうやってその答えに辿り着いたか」という試行錯誤の過程を褒めてあげてください。
孤独な思考時間を確保する: デジタルを遮断し、紙と鉛筆だけで自分の内なる声と向き合う時間が、AIにはコピーできないオリジナリティの源泉となります。
未来は、AIを使いこなす者のものです。そして、使いこなす資格を持つのは、AIに頼らずとも自分の足で歩ける自学自伸の体幹を持った人間だけなのです。
EIMEIグループ(エイメイ学院・明成個別・EIMEI予備校)では、この「自学自伸」の考え方で子どもたちの学びを見守っています。無料体験・ご相談はお気軽にどうぞ。
