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第5話 別れのとき… 〜後編〜
「思えばいろんなことがありました。 僕が特に一番記憶に残っているのが、
暴走族事件です。 あの時のことは一生忘れません。
僕も先生のために命を賭けます。 1年半の間、本当にありがとうございました。
でも、これはお別れではありません。 僕たち12人と先生との新しいスタートです。
そうですよね。」
「その通りだ。 よく言った滝沢。」
「・・・でもな、・・・お別れだ。」
「なんでそんなこと言うんですか。」
「僕はずっと先生についていきます。 これがスタートだって言ってください。
でないと、かなしくてかなしくて、このつらさにつぶされそうです。」
「・・・お別れだ。」 「お前達はもう十分強くなった・・・。
この俺だって、お前達とずっと一緒にいたいさ。 でも、俺は先生なんだ。
君達は生徒なんだ。 君達とは先生と生徒という関係で出会った。
この大前提は絶対にくずしてはいけない。
先生が先生をやっていたから君達と出会えたんだ。
このお互いの立場に感謝しなくてはいけない。 だから、・・・お別れだ。」
「なぜですか。 わかりません。」
「・・・先生の仕事は、生徒を育てること。
先生は君達に、先生を越してもらいたいんだ。
この俺よりもっともっとかっこいい人間になってほしいんだ。
確かに、この後もみんなで一緒にいたら楽しいさ。
でもさ、その楽しさは人間の成長を止めてしまうような気がするんだ。
俺についてたら、俺どまりの人間になってしまう。
それでもいいって言ってくれる人がいるかもしれないけど、
それを許してしまったら、俺は教師失格だ。 『先生』という立場に甘えて、
自分だけ気分が良くなっているようじゃ、そんなのは教師じゃない。」
「・・・・・・・・・」
「・・・この俺を離れる時が来た・・・。」 「お別れだ。」
教室中、誰一人言葉もなく、ただ泣いていました。
「別れても、思い出は消えない。 君達のことは、俺の心に深く刻み込まれた。
そして君達の心の中にも、この俺と、クラスの仲間との思い出が
深く刻み込まれているはずだ。 すべては俺達の心の中にある。
この思いさえ忘れなければ、どんなことにも勇気をもって挑戦できる。
形には見えないが、俺達はいつでも一緒さ。 さあ、次のステップに踏み込むぞ。
高校進学が決まった者は、新しい学校で新しい自分に挑戦してみろ。
就職が決まった者は、これから厳しい毎日が待ってるぞ。
でもその厳しさに耐えられるくらいの精神力はついたはずだ。
・・・ひとりじゃない。 みんな一緒さ。」
「先生はどうするんですか。 ここに残るんですか。」
「いや。 お前達が新しい自分に挑戦するように、この俺も新しい自分に、
そして新しい教育に挑戦してみる。 新しい教育の場を創り出してみようと思う。
いつスタートできるか、どこで始められるかまったく未知の世界だが、
俺は挑戦してみる。 『夢』見たものは必ずかなう。」
「それぞれの夢の実現にむけて、・・・お別れだ。
・・・先生最後に、君達に宿題を出す。
今から10年後、俺達の夢が かなっているかどうか、
いや、夢に向かって走りつづけているかどうかを確認しあうために、再会しよう。」
「10年後ですか。 それまで一度も会わずにですか。」
「そうだ。 一度も会わずにだ。 日にちは、21世紀の幕開け。
2001年の除夜の鐘を、この13人で聞くぞ。 いいな。
それまで10年以上もあるが、それぞれがそれぞれの夢を追っていること。
この宿題の答え合わせは、2001年1月1日だ・・・。」
「別れの時」〜完〜 R塾のVTRより・・・ 滝沢賢:著
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